オンライン資格確認は日本全国の医療機関のうち半数以上が申し込んでいるものの、実運用しているのは6000件程度となっています(10月上旬現在)。
オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)より引用
全医療機関の3%にも満たないというのは衝撃的です。
理由はいろいろとあるのでしょうが、システムベンダーから見た場合は設定設置作業の難易度が著しく高いというのは指摘できるのではないかと思います。
技術要素として、ORCAの場合は
- ネットワーク(特にIPv6、IPoE)
- Windows
- Ubuntu
- ORCA
の高度な知識が求められます。これらのすべてをカバーするのはなかなか困難です。二の足を踏むには充分な理由です。
弊社のお客様もオンライン資格確認の導入を希望され、納入したところが数件ですがあります。その(今のところの)知見を公開していきたいと思います。
IPoEのブリッジルーター
IPoEに関する知識は『
徹底解説 v6プラス』がとても参考になります。
前提知識を得た上でIPoEのブリッジルーターにふさわしい機種を選定したところ(各社のマニュアルを片っ端から読んでいったところ)、BuffaloのWiFiルーターはIPv6関連の機能が充実していることがわかり、実際に
WSR-1166DHPL2を採用することにしました。WiFi機能は無効にするため、安いモデルでいいと思います。

メトリック
オンライン資格確認端末には多くの場合NICが2つあり、かつIPv4とIPv6で合計4つのゲートウェイを指定することになります。となると自動メトリックだと意図したとおりにはならないため、手動で設定せざるを得ません。
こんな感じで設定することにしました。
- 支払基金に接続するネットワークのIPv6…10
- 院内ネットワークのIPv6…20
- 支払基金に接続するネットワークのIPv4…30
- 院内ネットワークのIPv4…40
ただし院内ネットワークのIPv6は通常使用しないため、そもそも無効にしていることが多いです。
資格確認データ置き場
マイナンバーカードで患者登録または保険確認する場合と登録されている保険の資格確認をするのとでデータの流れは違いますが、いずれにせよ『日レセオンライン資格確認の環境構築』を読むと資格確認データは資格確認端末に置き、そのフォルダーをマウントするようになっています。
ORCAサーバー(正確にはpush-exchangerとonshi-toolsを動かすPC)と資格確認端末は電源を切らずに運用する場合はこれでもいいかもしれませんが、いささか非現実的にように思います。かといって/etc/fstabに書くマウントの方式を工夫してもORCAにデータを取り込まない事態となり、結局onshi-receiverを再起動することになってあまり嬉しくありません。
ORCAサーバーにSambaをインストールし、共有フォルダーの設定をしてもWindowsからは見えるようになりません。理由がさっぱりわからなかったので徹底的に調査をすると、セキュリティ上の都合でWindowsがそのような設定になっているということでした。具体的には
SMB2 および SMB3 のゲスト アクセスは、既定では無効になっていますの指示に従って[セキュリティで保護されていないゲスト ログオンを有効にする]を有効にします。
セキュリティレベルとしては低下しますが、非常に限定されたネットワークで限定された用途であり、特に問題ないと考えています。
資格確認端末から共有フォルダーにアクセスするように設定変更する方法は『連携アプリケーション導入手順書』と『顔認証 DLL 定義説明書』に書かれています。
push-exchangerとonshi-toolsのバグ
バグというほどのものでもありませんが、push-exchangerとonshi-toolsのパッケージを慎重に見ていくと、/etc/cron.d/push-exchangerと/etc/cron.d/onshi-toolsで朝3時に自動的に再起動しようとしているように見えるのですが、実際には再起動はされません。というのもserviceコマンドにパスが通っていないからで、/usr/sbin/serviceとフルパスに変更すれば再起動するようになります。
push-exchangerを再起動しなければいけない機会はよくわかりませんが、onshi-receiverはわりと再起動したい機会もあるので、この修正を行った上で自動的に再起動したい時間を追加するといいかもしれません。
ルーターを1台で済ませたい
医療機関・薬局への導入におけるオンライン資格確認等システムとの接続に係るネットワーク連携のパターンの参考例を見てもわかるとおり、ルーターは(ホームゲートウェイも含めて)2台必要ということになります。LANの配線の都合上どうしても1台でやりたいという場合には、
NVR510またはそれ以上(RTX830とか)を使用すればいいのではないかと思います。実際うまく行きましたが、なぜかIPv4で名前が引けなかったので「中継先DNSサーバー」によく知られた1.1.1.1とか8.8.8.8とかを登録してやるとうまく行くようになりました。
そもそもポータルサイトの申請からしてトラップが多いのですが、技術的にハマったところとその(暫定的な)対策方法としては以上のとおりです。何かの参考になりますと幸いです。
posted by 株式会社アプセル at 16:09|
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